青とシルバーを基調としたそのティアラは、紅色によく映えるのだという。
その頂には大きなクリスタルが清冽な光を湛え、一方下の宝珠は白濁しているからこその純潔さを表しているかの様に、優しげな輝きを放っている。
正に純粋さの象徴とも言えるフローズンティアラ。いつ、誰が作らせ、作ったのか。
伝説は何世紀にも渡り語られ、そう、事実は美しい“伝説”と化した。
だが一体誰が知るであろう。
真赤な血潮で塗り固められた王国の歴史を。
美しくもおぞましい、先祖の生き様を。
玲瓏たるフローズンティアラの輝きと、人間の痛切な欲念。
この二つはたとえ、途方もない月日が経ち、国が滅びゆく時であっても変る事はない。
——変りたい、変えたい。
この、自分を?
——愛したい、愛されたい。
今まで多くの人がそうしてきたように。
——自由になりたい。そう、自由に。
自由とは? 何処に?
——自分を、世界を、運命を、変えることはできるのだろうか。
——愛する事が赦される、そんな日が来るのなら。
——強くなって取り戻す。自由と、…………————。
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